2025-4-6『この人ほど死を恐れた人はいない』山口紀子牧師

聖書:マルコによる福音書14:32-42

 ペトロ・ヤコブ・ヨハネ、十二弟子の中でもこの三人だけをイエスさまが連れてゆくときには特別なことが起こります。ヤイロの娘を生き返らせ(マルコ5章)、変貌山では本来の神の子である姿を見せました(同9章)。「御自分の秘密に属するような深い救いの真理をお示しになる」(吉村和雄師)ときなのです。

 ただし今回は変貌山、高い山での出来事とは全く違います。低い地にあるこのゲッセマネでイエスさまが見せたのは「ひどく恐れてもだえ始め」た姿です。

イエスさまが恐れる。そんなことは今までありませんでした。「この人ほど死を恐れた人はいない」これは宗教改革者ルターの言葉です。逆を言えば、この方は罪人の死がどれほど恐ろしいものかを本当の意味で知っておられる。イエスさまは救い主として、全ての人の罪を負う苦しみ、神に捨てられる苦しみを負ってくださるのです。

ところが弟子たちは一緒に祈るように言われたのに、眠ってしまいます。独り祈られたイエスさまの孤独が、そして人の無力と挫折がここにあります。

ゲッセマネの祈りは「主の祈り」を連想させます。聖なる聖なる聖なる神に「アッバ父よ」と呼びかけられるのはイエスさまだけ。このゲッセマネが、十字架があるから、私たちも今や「天にましますわれらの父よ」と祈れるのです。

天下分け目はこのゲッセマネの祈り。「この杯を取りのけてください」と祈られた主は「立て、行こう」と今や静かに十字架へ。眠っていた弟子たちは逃げ惑うのです。

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